憧 憬  2003.01.04


憧れに自分を重ねていた
いつしか同じだと思い込んでいた
同じじゃなければいけないと思い込んでいた

だけど
わたしはわたし 憧れは憧れ
ふたりは違う人間だから
違っていていい
違っていなければいけない

憧れに追いつきたいと願うけど
思えば思うほど遠くなってゆくけど
だからこそずっと抱いてゆける
果てしない夢を
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月ノ唄  2003.12.29


〜透月(トウゲツ)〜

ひんやり冷える風を身体に受け
自転車をこぐ冬の朝
水の無い空の海に浮かぶ
儚い風情の白い月

溶けた半月 空と同化し
仲良く分けた砂糖菓子のよう

いつもわたしを優しく見下ろす
透明な光で包みこんでくれる
涙の雫も勇気に変える
この風の後押しを受けて


〜紅月(コウゲツ)〜

平和なんて 紙の上にしかない
この世界は絶えず争いが在る
人間が種を撒き散らし
毒々しい華を育て上げる

在りもせぬ平和背負いし兵士
悲しき死の香を神は見る

今宵 紅き満月が昇る
地上に流れし血を吸い取り
我らの罪の色を具現する
赤く朱く紅い月

緋く紅くあかい月


〜聖月(セイゲツ)〜

夜闇を照らし出す月は
神と見紛う清廉纏い
迷いうずくまるわたしの姿を
しんしんと見つめてる

手を差し伸べぬ冷たい光
だけどそれが一番の優しさ
人間の秘めし力を最大に引き出すために

月はただ 見下ろすだけ
続く道選び取る権利は
自分自身にしかないから

月はただ 見守るだけ
試練はすべて神の思し召しだから

月は光を与えるだけ
神に似た威厳を湛えながら
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雑草の心  2004.11.22


踏まれても踏まれても
決してへこたれない心を持ちたい

毒にまみれても
曲がらず腐らず天へ伸びる
雑草のような心になりたい

世の中綺麗なことばかりではなく
心を枯らしてしまいそうになるけれど
負けたくない
強くなりたい

豪華な花びらは要らない
綺麗な色も要らない
目立たなくても小さくても
強く生きて花を咲かせたい
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輝 夜  2003.11.10


天頂に在る
目映いばかりの月の光
降臨する 神秘の帳
星光をも支配し
凍えた空気がその力を増大し
地上を照らし出す
輝夜かぐや
穢れた世界に堕とされし罪人
輝夜かぐや
永遠の楽土へ還りし天上人
わたしは
この月に
貴女を見た――
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檸檬紅茶  2003.7.17


大好きだったレモンティーを
すっぱいと感じた

あなたの横顔
思い出すから

レモンティーのパック片手に
笑うあなたの顔

にがい

思いで

浮かびあがる感情は

生きて……
胸を締めつける
何ともいえない切なさは

ふと香る
ほのかな檸檬色……
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何処かへ  2002.6.22


お気に入りの音楽と
流れてゆく景色
機械的な街並み
細い道をころがるゴムボール

人間や自転車や住宅街
窓の外が玩具のよう

わたしは旅立つ
昇ってゆくのか堕ちてゆくのか
何もわからないけれど
ただひたすら進んでゆく
自分を脱ぎ捨てるために
新しい世界へ
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春、香る  2003.4.16


自転車で、風になる
ふっと、よぎる
春の香り
大好きな、甘い香り
「春が来たんだなあ」
さらさらと、そよ風
あの頃の切なさ……よみがえる
この香り、そして彼の瞳
紡がれた言葉……涙
思い出す、それは過去
今はただ……
春香る、沈丁花
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失くしたもの  2002.8.10


ある時ふと夜空を見上げて
星を指でたどってみた
幼い頃に覚えた星座
見つけられなかった

夜空は何も変わらないのに
あまりにも長い間
わたしは空を見上げることさえ忘れていた

ひときわ明るく輝く星も
その名前を思い出せず

わたしは何を失くしてしまった?
星はいつも同じところにあり
変わらない瞬きを繰り返しているのに
わたしが変わってしまったの?

夏の大三角形を見上げると
流れ星がひとすじ流れた
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