【月のうた】


淋しさに 秋の夜の月 見上ぐれば 君の笑顔ぞ 重なり見ゆる


つらき世ぞ 憂き世ぞとなむ 嘆きける 時雨に泣ける 月を眺めて


射干玉ぬばたまの 夜照る月に あくがれて 曇る心に 落つる涙よ


彼は誰そと 問ひける君は 匂ひたち ほのぼのと照る 有明の月


窓の外 深雪降りしく 庭のは 月照りかへす 鏡とぞ見る


冬空に 雪間の月の 光射し 真白なる地に 切切としむ new*

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【恋のうた】


逢ふ日まで 日にちを指折り 数ふれば 氷れる冬の 月もくるか


愛しき人 君のぬくもり 今日あれど 明日はなしとぞ 思へばつらき


つなぐ手に 鎖を掛かば 離れまじ 醜き想ひ 胸に秘めつゝ


想はれし 証なるらむ 頬におく ちひさく赤き 思はれにきび


濡れそぼち ますます燃ゆる もみぢ葉は 涙に濡るゝ 恋心かな


吐く息の 消えゆくさまを 眺めつゝ その儚さに わが恋重ぬ


君帰りぬ 二度ふたゝびあふみと 知りながら 心にぞ吹く 雨いだく風


前をゆく 届かぬ君の 影を追ふ はかなき空へも 涙の海へも


かの恋は かぎろひかとぞ 思ほゆる すさびし心 今し凪ぎゐて


ことのはが 重き理由は 唇の つむがぬ涙 ふくめばぞかし


想ひ出と なりにし君の 文見れば 幼き恋の 心思ほゆ new*

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【心のうた】


はるかなる 空へと続く 日の影の 雲間よりもる きざはしのぼらむ


「行ってきます」 きらきらしきかな 教へ子の 声と笑顔と 待たむ将来


人てふは よろづの言の葉 授かれど 足りず悩まし 余りて苦し new*

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【季節のうた】


きよき夜 ほどは雲居の ごとなれど 心あくがれ 共に祝はむ


東風こちおそく 梅の蕾は かたけれど 花よく咲かす 春を忘るな


師走入り 緑の多き 山すそに 深緋こきひに灯る あかきもみぢ葉 new*

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